皆さんこんにちは、今日は未成年のお子さんをもつ親にぜひとも読んでほしい内容です。
遺言というと、財産の分配方法のイメージが強いですが、財産以外の事も決めておけますし、法的効果も発生します。
目次
どんなことが決めれるの?
主に身分関係で
・未成年後見人、未成年後見監督人の指定
・遺言認知
・祭祀主宰者の指定(さいししゅさいしゃ)
が挙げられます。
その中でも今回は、「未成年後見人、未成年後見監督人」のことについてお話します。
未成年の親権者(法定代理人)は原則両親の両方又は一方
未成年(20歳未満)の子は原則、一人では法律行為を有効にできません。
よって、法律行為をする時は法定代理人である親権者に同意をしてもらったり、親に代理してもらう必要があります。
(法律行為といえば難しいですが、単純に物の売買を思い浮かべればよいか と思います。
例えば、子供が中古の本やゲームソフトをリサイクルショップ等で買取りしてもらう為には親の同意が求められますね。
これは民法に同意を得なければ有効に売買契約ができないとの決まりがあるからです)
逆に本や、ゲームを買う時は同意を求められないじゃないか!という意見もあると思いますので一応説明しておくと、
「親があげたお小遣いは自由に使っていい」
のでお小遣いで本や、ゲームを買うのは有効です。
あとは、「このお金は塾の授業料として払うこと」などと目的を指定して渡したお金はその目的の範囲内で有効に使うことができます。
民法ではわかりにくい言い回しで規定されていますが、つまりは上記のような意味です。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。以下略
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
親が亡くなってしまった場合にはどうしたらいい?
では、
①両親が交通事故で亡くなってしまった場合や
②両親が離婚して母子家庭だった場合のお母さんが亡くなってしまった場合にはどうなるのでしょうか?
① の場合には祖父母が自動的に法定代理人(親権者)になるのでしょうか?
② の場合には離婚した元父親の親権が復活するのでしょうか?
答えは どちらの場合も NO です。
このような場合に子供の法定代理人になって子供の身上監護をしたり、財産管理をするのが未成年後見人です。(いわば親のかわりです)
この未成年後見人が、子供の代わりに次のようなことをしていきます。
(以下代表例です)
・子供のしつけをする、居所を指定する、職業許可する(事業を営む、雇用される)、未成年で結婚することに対する同意をする
・亡き親の相続による財産の名義変更(不動産の登記)、預貯金の解約、生命保険の請求
・アパートであれば賃貸契約、公共料金の契約、スマホの契約
・高校や大学へ入学する為の各種契約
両親が亡くなった後、身の回りの生活上のことは祖父母やおじ、おばさん達ができますが、法律行為は例え祖父母やおじ、おばであっても法定代理人ではないので出来ません。
普段はこのようなことを考えませんし、未成年後見人という言葉も耳慣れない 言葉なので、気に留めることもありませんが(そもそも知っている方もごく稀かと思います)、ご自身にもしもの事があったらと思うと何とか対策を立てておきたいと思うかと思います。
対策:未成年後見人を遺言で指定する方法
生前に立てられる対策は1つだけあります。
それは、あらかじめ、遺言で未成年後見人を指定しておくことです。
もちろん頼もうとする相手が信頼ができる相手で、相手にも内諾をもらっておくことが必要でしょう。(想定されるのは兄弟姉妹や、両親などの親族が多いでしょう)
「未成年者に最後に親権を行う者は、遺言で未成年後見人を指定することができる」
という規定が民法にあります。
わかりやすく翻訳すると「未成年後見人を指定できるのは親権者であるあなただけですよ」と言っているのと変わりません。
最後に親権を行うものとは例えば離婚して子供の親権者であるシングルマザーがそうです。
両親がいる場合でも、どちらが最後に親権を行えるかは誰にもわからないので、遺言を作る時に子供が未成年の場合には両親どちらであっても遺言に盛り込んでおくとよいかと思います。
以下に自筆証書遺言の記載例を示しますので、参考にしてください。
このブログを見て今すぐ書きたい!と思い立った方は、自筆証書で今すぐ自分でも作れますので、ひとまず子供のお守り代わりに書いてみてもいいかと思います。
さらにこの自筆証書遺言を以前のブログでご紹介した「法務局での自筆証書遺言保管制度」を利用して保管することで安く、確実に、遺言が実現されると思います。
(自筆証書遺言保管制度を知りたい方は以前のブログへ)
(記載例)
遺言書
第〇条
私は、全財産を私の長男〇〇(〇〇年○○年〇〇日生)に相続させる。
第〇条
私は、未成年である私の長男〇〇(〇〇年○○年〇〇日生)の未成年後見人として下記の者を指定する。
記
住所 〇〇市〇〇町〇番〇号
本籍 〇〇市〇〇町〇〇
本籍は分かれば書いた方がgood
氏名 A
生年月日
第〇条
遺言執行者としてAを指定する。
遺言執行者は未成年者以外でここではAを指定しておいたがgood
令和○○年〇月〇〇日
氏名 〇〇 〇〇 印・・認印でも可
未成年後見人を指定しておかなったらどうなるの?
遺言で未成年後見人を指定しておかなかった場合は、家庭裁判所に選任の申立てをするしかありません。
亡くなってしまった親は何もする必要はありませんが(というか死んでしまったので何もできません)、子の親族は非常に大変です。
家庭裁判所に下記の書類揃えて未成年後見人選任の申立をしなければなりません。
未成年後見人選任の申立書
申立事情説明書
未成年者に対して親権を行うものがないこと等を証する書面(親権者の死亡の記載された戸籍(除籍,改製原戸籍)の謄本(全部事項証明書)や行方不明の事実を証する書類等)
後見人候補者事情説明書
未成年者の財産目録及び資料(不動産がある場合は登記事項証明書、預貯金がある場合は通帳の写し)
亡親の財産目録及び資料(不動産がある場合は登記事項証明書、預貯金がある場合は通帳の写し、加入していた保険がある場合は保険証書の写し、借金がある場合は借金の額がわかる資料等)
未成年者・後見人候補者の戸籍謄本及び住民票(戸籍附票)
収入印紙800円分
郵便切手約3000円分
必要に応じて追加書類あり。
このようにして選任された未成年後見人は、年1回家庭裁判所に事務報告をせねばならず、選任された方は選任申立てから任務終了(子供の成人)までの期間、想像以上の負担となるでしょう。(一方遺言で指定された場合は報告なし)
ますます遺言で未成年後見人を指定しておく必要性を感じた方が増えたと思います。
未成年後見人であることの証明はどのようにするか?
遺言で指定された未成年後見人、家庭裁判所から選任された未成年後見人はどちらも未成年者に代わり法律行為をしたり、同意をする事ができたり、勝手に未成年者がした法律行為を取り消すことができますが、(謂わば親権者と同等の立場)第三者に対し自分が未成年後見人であることをどのようにして証明するのでしょうか?
未成年後見人は未成年者の戸籍に記載されます。その戸籍をもって未成年後見人の証明書とします。
遺言での指定未成年後見人の場合は子の本籍地、又は未成年後見人の本籍地の市役所の戸籍係に届出をします。
裁判所で選任された未成年後見人の場合は裁判所が職権で届出をするので特に届出不要です。
未成年後見監督人の指定は必須ではない(メリットはある)
未成年後見人の選ばれ方、任務内容についてはお分かりになったかと思います。
ただ、未成年後見人だけでは心もとないなという場合には未成年後見人を監督する立場の未成年後見監督人を指定でき、又は選任されることがあります。
主な任務は、未成年後見人の職務の監督です。
つまりは遺言で指定した未成年後見人が子供をくいものにする可能性もゼロではないために、未成年後見人を監督するいわばお目付け役を指定しておくことも可能です。
さいごに
今回は日ごろあまり馴染みのない未成年後見人についてお話しましたが、未成年のお子さんをもつ親の方は、もし自分が突然死してしまったら、わが子が大変だなと考えてしまう内容だったかもしれませんね。
それがたった1枚の遺言(自筆遺言の場合)を作っておくだけで不安は解消できるのです。
知らないことはとても怖いことです。このブログを読んでいただいた方は、ぜひ対策を立ててほしいと思います。
これからも生前対策、相続に関するお役立ち情報をお届けしてまいりますね。
では今回はこの辺で 次回はもう一つ大事な身分関係の「認知」のことについてお話ししたいと思います。
ありお事務所では遺言の作成サポート、相談、アドバイスを行っております。